歯科医師として子供の虐待防止への対応
児童虐待の防止等に関する法律の中で“「医師」その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない”と定められています。小児歯科学会はこれに関連して
子供の虐待防止対応のガイドラインを定めています。
ご参考のため全文を掲載いたします!
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一般社団法人 日本小児歯科学会
「子ども虐待防止対応ガイドライン」
はじめに
超少子社会となった今日、子ども虐待の増加・深刻化の傾向を見逃すことはできません。本来「群れ」の文化であった子育ては、核家族で育った親が、「個」で育児不安を抱えながら子育てをしなければならない時代になりました。さらに、大都市部では近隣の人間関係が希薄になる中、地域で互いに子育ての手助けをすることが少なくなっています。子育ての理想目標と現実との格差によるストレスが、虐待への引き金となっていることもあります。虐待者自身が虐待を受けた経験のある場合や、配偶者による暴力が関連している場合もあり、また、10代の未熟な親、継父や継母という複雑な家族構成等々、虐待の背景にある状況を十分に把握した対応が必要となります。子どもの環境が複雑化し、子どもの養育は年々困難になってきているのが現状です。
しかし、虐待とはあくまでも子ども側からの視点であり、親がその子を嫌いで憎いからという条件がつくわけではなく、親が一生懸命でも子ども側にとって有害な行為であれば虐待になる可能性があります。そして何よりも子ども自身が養育者に不安や恐怖をいだき、親の愛情を渇望しているかどうか見極めることが重要です。
社会の宝である子どもたちや子育てに奮闘している親たちを社会が応援するのは当然のことであり、歯科診療室や学校歯科保健の場、あるいは1歳6か月児や3歳児歯科健診で直接子どもやその親に接する歯科医師、とくに小児歯科医師は、専門職の一人として子育て支援をする責務を負っています。小児歯科医との会話がお母さんの癒しに繋がり、小児歯科受診がお母さんのくつろげる時間でありたいと考えています。
診療室で子どもたちの口腔保健のために親たちとさまざまな情報交換をしている時、親が子育てに疲れているなと感じたら(気付き)、育児の「困難さ」がどれくらいのものか評価し(アセスメント)、育児放棄や子どもに対する拒否的態度に繋がる前に親を支援することが求められています。また、場合によっては地域のネットワークに連絡することが必要です。
繰り返し歯や口の外傷で診療室を訪れた子どもとその親の様子に、また学校歯科医として毎年歯科治療勧告をしているにもかかわらず、未処置歯のまま放置されている多発重症う蝕等に虐待(ネグレクト)を疑った(気付き)としても、親との関係や地域の虐待ネットワークへの連絡が難しい、あるいはわずらわしいと考え、目の前の子どもを守ることに躊躇していた歯科医師も少なくないかもしれません。
しかしながら、改正された児童虐待の防止等に関する法律の中で“「医師」その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない”と定められています。診療室で発見した場合は、“児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、または児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならない”と義務付けられました。また、1歳6か月児や3歳児歯科健診の際には、管轄地域の保健師などへ、学校においては、虐待が疑われる子どもを発見した場合、まずは養護教諭、学級担任にその旨を告げて、必要なら保護者を交えた健康相談、最終的には学校長の判断に委ねることになっています。
歯科医師の「気付き」を適切な支援に結びつけるプロセスは市町村により異なりますので、普段から地域のネットワークを調べておく必要があります。すでに子どもの虐待等についてガイドラインを策定している都道府県歯科医師会も少なくありません。
本ガイドラインを一読され、どこになにが書かれているかを知り、必要に応じて有効利用されますよう願っています。
なお、本稿では「子ども虐待」という表現に統一していますが、法律の文言に関する部分はそのまま「児童虐待」としています。
基本となる法律等
1)児童虐待の防止等に関する法律(平成16年一部改正)の概要
本法律には、児童虐待の定義、国及び地方公共団体の責務、児童虐待の早期発見、児童虐待に係る通告、通告又は送致を受けた場合の措置、児童虐待を行った保護者に対する指導、児童虐待を受けた児童に対する支援等が規定されています。
平成16年の改正の主なものは次の通りです。
◯児童虐待の定義(法第二条関係)
◯児童虐待の定義について、次の2点が明確にされました
①保護者以外の同居人による児童に対する身体的虐待、性的虐待及び心理的虐待を保護者が放置することも、保護者としての監護を著しく怠る行為(いわゆるネグレクト)として児童虐待に含まれること
②児童の目前で配偶者に対する暴力が行われること等、直接児童に対して向けられた行為ではなくても、児童に著しい心理的外傷を与えるものであれば児童虐待に含まれること
◯児童虐待の早期発見等(法第五条関係)
①児童の福祉に職務上関係のある個人だけでなく、学校、児童福祉施設、病院等の児童の福祉に業務上関係のある団体も児童虐待の早期発見に責任を負うことが明確にされた。
②①の個人及び団体は、児童虐待の早期発見に努めるだけでなく、児童虐待の防止並びに児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援に関する国及び地方公共団体の施策に協力するよう努めなければならないこととされた。
◯児童虐待に係る通告(法第六条関係)
児童虐待の早期発見を図るため、通告の対象が「児童虐待を受けた児
童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」に拡大されたことこれにより虐待の事実が必ずしも明らかでなくても、一般の人の目からみれば主観的に児童虐待があったと思うであろうという場合であれば、通告義務が生じることとなり、児童虐待の防止に資することが期待されるところである。
通告が、法の趣旨に基づくものであれば、それが結果として誤りであったとしても、そのことによって刑事上、民事上の責任を問われことは基本的には想定されない。
2)平成19年の一部改正の概要(平成20年4月施行)
児童の安全確認等のための立入検査等の強化、保護者に対する面会・通信等の制限の強化、保護者に対する指導に従わない場合の措置の明確化などが見直された。
下記ホームページ参照
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv-html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO082.html
対応のための基本的知識
1)診断アセスメントの質の向上のために
何よりも大切なのは、最近では虐待が決してまれではないことを認識することです。6歳未満の幼児では、1000人に2.2人の割合で虐待が発生しているとの推計もあります。(厚生科学研究)
私たち小児歯科医も遭遇する機会があるはずです。もしかしたら、子どもたちのSOSを受け止められないでいるのかもしれません。
我々の常識では思いおよばない状況のなかでおきているのが虐待の実態です。まずは、「おや?」「なんかおかしいな?」という疑いを持つことが重要なことです。
医療機関で虐待に気づくポイントは、①医学的に説明がつきにくいこと②不自然と思われることを見逃さないことです。「繰り返す外傷」「つじつまのあわない事故(起こりにくい場所での外傷)」「説明のつきにくい放置された多数歯のう蝕」などは要注意です。口の中だけでなく、体全体や子どもの行動、保護者の態度などにも目を向けることが大切です。
診断用アセスメントに項目の例を示しますが、これらの兆候が必ずしも虐待に起因しているとは限りません。子どもがこれらの兆候を急に示すようになったり、今までとは極端に異なった行動を示すようになったときには虐待されている可能性が考えられます。子どもの行動、態度を注意深く見守り、地域のネットワークと情報交換することも必要でしょう。
○子どもの診察から
不自然な外傷(あざ、打撲、骨折、火傷、タバコを押しつけた跡)がある。
不自然な外傷が繰り返し起きている。
極端な栄養障害や発達の遅れ(低身長、低体重)
必要な医療ケアがなされていない。
不潔な服装や、兄妹との服装の差が激しい。
髪の毛や手足など極端に不潔。
○子どもの行動の観察から
表情が乏しい(無表情、凍てついた凝視)。
自分の殻の中に閉じこもり、人を避けようとする。
態度がおどおどしている。おびえている。
親の顔色を疑ったり、親を避けようとする。
落ち着きが無く、乱暴。他の子どもに対して攻撃的な態度をとる。
無気力、無表情。
○保護者の観察から
子どもの扱いが乱暴であったり、冷たい。
子どもの発達状況を覚えていない。
子どもの状態に関して不自然な説明をする。
母子健康手帳にほとんど記入がない。
2)守秘義務と通告義務
私たち歯科医師には、職業上知りえた個人の秘密を守る義務があります。しかしながら、子ども虐待では子どもを守ることが最優先であり、法律(児童虐待防止法)で通告義務が守秘義務より優先されると明示されています。
虐待は隠されていることが多いので、私たちの疑いはとても重要な情報になります。子どもを守るために、まず相談あるいは通告という行動を起こしましょう。
こうした行動は、もし虐待でなくても、苦しい思いをしている親子が「よき援助者」に出会うきっかけになるかもしれません。「気にかかる親子がいます」と専門機関に相談してみましょう。
3)地域のネットワークを知る
子ども虐待の早期発見・再発防止には地域の関係する各機関のネットワークが何よりも重要です。一人であるいは一つの機関で子どもを虐待から守ることはできません。
地域の関係機関と連携をとりながら、私たちの役割を果たしましょう。
地域のネットワークに関わる機関は以下のようなものがあります。
保健所・保健福祉センター、子育て支援センター、民生・児童委員、民間の虐待相談、児童相談所・福祉事務所、児童福祉施設、病院・医院、学校・保育所・幼稚園、警察、地域住民
日頃から地域のネットワークをしり、連携をとることは子どもの健康と子育て支援に関わるものにとって大切なことです。
日常診療(チェアサイド)における観察と対応および支援
1)母親への対応のチェック
子ども虐待等の対応の最終目標が子育て支援であるとすれば、その支援者である私たち歯科医師が母親への対応が不十分では支援者にはなれません。
母親への固定概念としては
* 母親というものは、子供を愛情豊かに養育できるはずのものである。
* 母親なのだから、子どもがかわいく思えないはずがない。
* 母親なのだから、(一人で)子育てができるはずである。
* 産んだのだから、育てるのが当たり前(育てられないのならなぜ産んだのだ!)。
* 子育てが大変なのは当たり前、母親なのだから耐えて頑張りなさい。
* 育てられないなどと甘えたことを言うな、それでも母親か!
などが常識であるという認識を言います。
以上のような認識を少しでも持っているなら、先ずその観念から解き離れることから始めましょう。
2)疑い事例の発見
疑い事例の発見をするためには、以下のような今までの社会的認識を転換しなければなりません。
① 虐待問題に関わるには勇気が必要。
② “おせっかい”でよい。
③ 疑ってかかる。
④ 告げ口をする。
⑤ プライバシーに踏み込んでいく。
⑥ 血で繋がった親子であっても虐待は起こりうる。
⑦ 客観性はない。
3)グレーゾーン事例への対応および支援
グレーゾーン(虐待予備軍)に対しては、「子育てがつらい」と言える(共感的に歯科医院に来てもらえる)信頼関係づくりや仲間づくり、ケア・グループへの参加などにより、孤立感を和らげつつ、母性神話の呪縛を解いてゆくことが有効です。
グレーゾーンの時期から保健師などの援助専門家が関係をつくっていれば、イエローゾーンの入り口で専門家にSOSが来ても適切な育児支援が導入でき、それ以上の進行を予防できる可能性が高くなります。
そのためにも、我々、歯科医師は地域のネットワークと連絡を取っておきましょう。
【参考】
虐待の重症度分類
① 生命の危険あり(直ちに保護)・・・レッドゾーン
② 重度の虐待(要保護)・・・・・・・レッドゾーン
③ 中等度の虐待(要支援)・・・・・イエローゾーン
④ 軽度の虐待(要経過観察)・・・・・グレーゾーン
4)発見、通告および連携支援
通常の発見や通告は、客観的なものでなくとも主観で構わないと新しい法律では規定されています。しかし、歯科医療上の発見は客観性が高く、確かな証となり、通告にはなおさら強い確証因子になります。
具体的には、頻回に生じる不自然な顔面および口腔の外傷事例、重症なう蝕が広範囲にあり長期間に亘り放置されている事例、および通院を途中で止めてしまうなど育児上の放棄と考えられる事例などです。
虐待防止等の最終目標は、子育て支援であり、母親にとっては「養育できる母親」「よい母親」になることではなく、「子どもを虐待しないことができるようになること」、「子育てを他人に援助してもらうことができるようになること」なのです。
そのためには、地域における連携ネットワークがなければできません。個人で抱えるものではなく、連携によって支援してゆくことが大切です。
それでも迷う場合や時があります。そのときの決め手は、その子どもの発育が健全であるか、健全な範囲であるかが“決め手”になるといわれています。
歯科的特徴と対応
子ども虐待の歯科的特徴というと、歯または口腔顔面の外傷を考えますが、一般的には保護者が歯科治療を受けさせず、多数歯のう蝕や歯肉膿瘍などが放置されているいわゆるネグレクトを発見する可能性のほうが高いのではないでしょうか。しかし、もし虐待が疑われる場合は歯科診療中に、頭部、顔面、腕、手足など皮膚や肌が露出するところを観察することも大切です。
1) 顔面、口腔の身体的虐待とネグレクトの所見
虐待による顔面口腔の創傷の見方は、身体的虐待による全身の創傷の見方と異なるものではなく、偶発的損傷か故意による損傷かを判断することが特に重要です。日本においては、口腔領域の所見については報告がまだ少ないと思われます。下表は虐待とネグレクトによる顔面、口腔、歯にみられる損傷の特徴を示しています。
(都築11-13):Senn and Alderより改変)
2)顔面、口腔の虐待の診断における注意点
顔面、口腔の偶発的外傷は日常臨床ではしばしばみられることですが、虐待が疑われる不自然な外傷との区別は困難な場合が多く、下記の注意点を参照し、診査することが重要です。(都築11-13)より引用一部改変)
①家族歴、受傷場所、受傷時間、受傷から来院までの時間、その間の対応で虐待の可能性が判断できる。
②顔面、口腔内の非偶発的外傷は、身体的虐待を意味する。
③複数の外傷痕の存在は、虐待を示唆する。
④受傷時期の異なる外傷痕の混在は、繰り返された外傷を示唆する。
⑤受傷状況の説明と臨床所見の不一致、繰り返し受診や子どもと両親の説明内容の食い違いは、虐待を疑う余地がある。
3)ネグレクトの口腔・歯の診断における注意点
養育者が子どもの世話をあまりしない、とくに十分な食事をさせず、歯磨きもしないため、多数の未処置のう蝕や歯肉の腫脹があれば、それ自体がネグレクトを十分疑わせる要因です。平成13年の東京都福祉局の報告によれば被虐待児の数は10年前に比べ20倍になっており、被虐待児のう蝕は6歳未満児の乳歯において一般の児の2~3倍高く、未処置歯数は7倍であり、6歳から12歳の永久歯においても、2~3倍高い数値を示しています。被虐待児は明らかに未処置歯のう蝕が多くみられます。またネグレクトを受けた児童は偏った食事、とくにカップ麺などのインスタント食品や清涼飲料類が多く、口腔清掃不良による極端な歯垢沈着や口臭などが見受けられます。
1歳6か月児、3歳児歯科健診、就学時歯科健診を担当する歯科医師は、子ども虐待の早期発見の可能性ある機会と受け止め、歯科健診を心がける必要があります。
4)必要とされる法医(歯)学的知識
子ども虐待の歯科的特徴としては歯および口腔に限定されがちですが、早期発見という立場から見れば、頸部、顔面部の観察は歯科医師の重要な役割となってきます。頸部、顔面部に認められる虐待を示唆するような特徴的な創傷痕として法医学的には以下のようなものがあげられます。(花岡より引用13、14)
①平手打ち痕(slap mark):平手打ちによって生じるもので鬱血帯が平行に
認められる。
②扼痕(やくこん):手や指、爪で頸部を圧迫した際に残る痕跡で、多くは
皮下出血や爪の痕が残る。
③索状(条)痕:紐などによって頸部を圧迫した際に皮膚に残る痕跡。
このような特徴的創傷痕が認められれば、仮に虐待を受けた子どもの保護者が歯の破折や口腔粘膜の損傷を転倒によるものとして来院した場合でもその嘘を見抜くことが可能です。
おわりに
近年、子ども虐待については社会問題化されており、本学会でも子どもたちを相手に毎日診療している小児歯科医師にとっても、早急に一つの指針となるガイドラインの作成が要望されていました。そして一昨年、「児童虐待防止対応ガイドライン」を日本小児歯科学会でまとめることができました。法律上は児童虐待という文言は残っていますが、一般的に中学生以上は児童とは言わないため、今回は子ども虐待という文言に変えさせてもらいました。そして子ども虐待に関して歯科的特徴と対応を追加し、アセスメントシートに関しても一部顔面口腔の所見を追加しました。虐待が疑われるケースの経験がある歯科医師は少ないうえ、経験があっても通告する歯科医師はさらに少なく、通告することに不安を感じているという報告があります。15)
本ガイドラインが臨床の最前線でご活躍の小児歯科医師の皆様にとって、子ども虐待防止に向けて意識的に取り組む材料となり、少しでも子ども虐待の早期発見のお役に立つことができれば幸いです。
〖参考文献〗
1)(社) 岐阜県歯科医師会:虐待防止の指針〜歯科医師の立場から〜、2008.
2)森岡俊介、佐藤甫幸、宮本信也、市川信一:歯科医師の児童虐待理解のために、(財)口腔保健協会、2004.
3)鷲山拓男:子どもの虐待と母子・精神保護―虐待問題にとりくむ人のための「覚え書き」、萌文社、2004.
4)(社)日本医師会監修:児童虐待の早期発見と防止マニュアル-医師のために-、明石書店、2002.
5)奥山真紀子:医師のための虐待対応マニュアル、社会福祉法人子どもの虐待防止センター、2002.
6)日本子ども家庭総合研究所編:厚生省 子ども虐待対応の手引き(平成12年11月改定版)、有斐閣、2001.
7)日本弁護士連合会子どもの権利委員会編:子どもの虐待防止・法的実務マニュアル(改定版)、明石書店、2001.
8)信田さよ子編:子どもの虐待防止最前線、大月書店、2001.
9)柳澤正義監修:改定子ども虐待 その発見と初期対応、母子保健事業団、1999.
10)赤坂守人:「児童虐待」に対する学校歯科医の役割と対応、日本学校歯科医会会誌92,2004
11)都築民幸分担執筆:子ども虐待の臨床、医学的診断と対応、南山堂、2005.
12)都築民幸:虐待の発見、防止、支援における歯科医師の役割、Forensic Dent Sci、1:39-44、2008.
13)都築民幸、花岡洋一分担執筆:(社)千葉県歯科医師会編 歯科と児童虐待(児童虐待対応マニュアル)2004.
14)花岡洋一:歯科領域における児童虐待の早期発見と防止について、兵庫県歯科医師会雑誌「歯界月報」、636:46-54 、2004
15)室賀 麗、遠藤圭子、杉本久美子:歯科保健医療職における児童虐待への意識と対応に関する調査、小児歯誌、46:407-414、2008
〖ホームページ〗
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
(社)日本歯科医師会 http://www.jda.or.jp/
全国の児童相談所のリストと連絡先
http://www.i-kosodate.net/search/pblc_srvc/cnsl_offc/counsel.asp
米国小児歯科学会 http://www.aapd.org
Clinical Guidelines: Oral and Dental Aspects of Child Abuse and Neglect.
〖各種文書様式例〗
各都道府県、市町村、地域歯科医師会により様式が決まっていることが多いので、あらかじめ調べて本ガイドラインに添付しておくと便利です
診断用アセスメントシート 取り扱い注意
子どもの名前 ( )(男・女)生年月日(平成 年 月 日)
保護者の名前 ( )
住所・電話番号( )
1. 子どもの身体症状について
全身状態:□低身長、□体重増加不良(やせ)、□脱水症、□不衛生(着衣の汚れ、臭い、垢の付着等)、□その他( )
皮膚症状:□皮膚の打撲・擦過傷:部位( )、□火傷(タバコ、アイロン、熱湯等):部位( )、□頸部の圧迫・擦過傷、□顔面の傷・眼の周囲のあざ
□その他( )
口腔症状:□口唇の腫脹、挫傷、裂傷、□口角部の挫傷裂傷、□小帯の裂傷
□頬粘膜、口蓋粘膜の挫傷、□正当な説明のない歯冠歯折、歯根歯折
□正当な説明のない動揺歯、脱臼歯、変色歯、□未処置の多発性重症う蝕
□外傷後の開口障害
その他の身体症状:□網膜出血、□鼻骨骨折、□顎骨骨折
2. 子どもの行動・心理特性について
□ 身体に触られることを異常に嫌がる。
□ 疲労感、無気力、活動性の低下、集中できない。
□ 無表情、笑わない、他者への関心が低い。
□ 大人の顔色を伺ったり、おびえた表情をする、警戒心が強い、視線が合わない。
□ 養育者(虐待している)が側にいる時といない時では動きや表情が極端に変わる。
□ 多動、些細なことでも過度の乱暴、ひっきりなしに注意をひく行動。
□ 帰りたがらない。
□ その他( )
3. 養育者や家庭環境の特徴
□ 子どもが泣いたりした時、その意味を汲み取ることができない。要求を予想したり、理解したりすることができない。
□ 子どもの扱い方が不自然である。育てにくさをよく訴える。子どもを甘やかすのはよくないと強調する。
□ 子どもに能力以上のことを要求する。発達にそぐわない厳しい躾や行動制限をする。
□ 養育者の気分の変動が著しく、自分の思い通りにならないと体罰を加える。
□ 経済状態や夫婦関係などに起因する生活上のストレスがある。生活や気持ちにゆとりがない。
□ その他( )
4. 子どもの話す内容に虐待を疑わせることが、□ある、□わからない
記載日:平成 年 月 日
記載者名:
平成 年 月 日
○ ○県児童相談所長 殿
医療機関の所在地及び名称
電話番号
歯科医師名 印
通 告 書
患者氏名・ID番号
住所
診断: (例,子どもの虐待,子どもの虐待疑い)
上記のとおり診断致しましたので、ご連絡申し上げます。今後の子どもと親の支援について、充分のご配慮をお願い申し上げます。
子ども虐待の早期発見の取扱手順
(診療室の場合)
診療時に虐待の疑い事例発見
医院内検討会
スタッフの誰かが虐待の疑い事例を発見した場合,
できるだけ素早く医院内検討会を開き,
複数のスタッフの見解を聞きながら,
診断用アセスメントシートを作成し,
通報するか否かを医院長が決定する。
児童相談所への通告
通告書の送付
添付書類 診断用アセスメントシート
(学校歯科健診の場合)
学校歯科健診時に虐待の疑い事例発見
養護教諭、学級 担任にその旨を告げて、必要なら保護者を交えた健康相談、
最終的には 学校長の判断に委ねる
(1.6歳児や3歳児健診の場合)
健診時に虐待の疑い事例発見
保健師等にその旨を告げる